循環器内科のよくある症状
胸痛
胸痛の原因は狭心症、心筋梗塞、逆流性食道炎、肺炎、胸膜炎、気胸、帯状疱疹、肋間神経痛、心臓神経症など様々な疾患が考えられます。一過性のもであれば心配ありませんが、重大な病気が隠れている可能性もありますので、念のため診察を受けてください。
息切れ、夜間呼吸困難
坂道や階段を上がった時に突然息が切れるような感じがあれば、心不全や不整脈、心筋梗塞などの心疾患を患っていることが疑われます。心疾患では、心臓の働きが悪くなり、肺に水がたまり、肺うっ血をおこし息切れなどの症状がおこります。悪化すると夜間呼吸困難となり、就寝中に息が切れて目が覚めてしまうようになります。これらの症状があれば早めにご相談ください。
動悸
動悸とは、普段よりも心臓の拍動が強く感じたり、飛ぶ感じがしたり、早く感じる症状です。拍動は様々な形で感じられ、脈が飛ぶように感じる場合、ドキドキと早く感じる場合、ドクンドクンと強く感じる場合、胸が詰まるような感じなどがあります。症状はストレスや緊張によって起こることもありますが、狭心症、心筋梗塞、不整脈など生命にかかわる病気のこともあります。動悸症状が気になるようであれば、早めの診察をおすすめします。
めまい
めまいは不整脈によって起こることがあります。めまいにも様々なものがあり、頭がふらふらするようなものや体がふわつくもの、ぐるぐると目が回るなどがあり、原因となる疾患も異なります。例えば、耳の疾患である突発性難聴やメニエール病によって起こることもあります。他にも脳卒中によってめまい症状とともに呂律が回らない、ものが二重に見えるなどの症状が起こります。めまいが生じたら、安静にしていただき症状が改善しないようなら、内科や脳神経外科、耳鼻科での診察をお受けください。専門病院での入院精査・治療が必要なこともあります。
足のむくみがひどい
心臓はポンプのような働きをしており、全身に血液を送っています。しかし、心筋梗塞や不整脈などの心臓疾患によって機能が低下すると血液が下肢の抹消静脈から十分に心臓にもどることができず遠い位置にある足にむくみが起こります。また、靴下のゴム跡が長く残ったり、足のすねを圧迫すると凹んだりするようになります。起床時にはむくみが改善していることが多いですが、夕方過ぎのむくみが続く場合は検査を受けることをお勧めします。
失神
不整脈、心筋梗塞、心臓弁膜症などの心疾患によって脳に流れる血液が少なくなり、一時的に意識を失う失神発作が起こる可能性があります。脳への血流低下は副交感神経反射や起立性低血圧などの良性によることもありますが、脳や心臓の異常によって起こることもあり、その場合は深刻な状態に繋がります。中でも、洞不全症候群や房室ブロックによって徐脈(脈が遅くなる不整脈)が起こると、命を落とす可能性もあるため、失神発作が起きた場合は早急にご相談ください。
下肢疲労
下肢の動脈や静脈に疾患が生じてしまうと、足にむくみやだるさ、痛みによる歩行困難、よくつるようになるなどの症状が起こります。これらの症状を加齢と思って放置する方もいらっしゃいますが、足の疾患である末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症など)によって生じている可能性もあります。末梢動脈疾患は、足の動脈が細くなったり、詰まったりすることで、足に十分な血液が送られてこなくなることで生じる疾患です。加齢によって発症リスクは高まりますが、しっかり治療することによって改善できるものなので、足の疲労が長引く場合は検査で原因を確かめましょう。
チアノーゼ
チアノーゼは、血液中の酸素不足が原因で皮膚と粘膜が青紫色に変色した状態です。酸素が足りなくなった血液は青っぽくなり、この血液が全身に流れることで皮膚が変色します。原因となる疾患には、心不全、先天性心疾患、重度の肺炎・肺水腫、肺気腫、ショックによる末梢性チアノーゼなどが挙げられます。チアノーゼは酸素がかなり足りていないことで起こるので、原因疾患の治療が必要です。
健康診断結果で異常や
要精密検査を指摘された
健康診断を受けることで狭心症、心筋梗塞、不整脈などの心疾患、しいては心疾患、脳疾患などの原因となる高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満症などの生活習慣病を見つけることができます。定期的に健康診断を受け、異常が指摘されたら必ず診察を受けられることをお勧めします。
循環器のよくある疾患
虚血性心疾患
(狭心症・心筋梗塞)
心臓はポンプ機能の役割を担っており、栄養素や酸素、血液を絶えまなく全身に送っています。しかし、心臓自体も他の臓器と同じく機能するためには血液を必要とするため、心筋に栄養や血液を送るための冠動脈があります。虚血性心疾患が起こると、冠動脈が狭くなったり塞がったりすることで血液が送られなくなります。
虚血性心疾患の中には狭心症と呼ばれる疾患があり、冠動脈が狭窄して一時的に胸痛が起こります。さらに悪化して心筋梗塞になると、血管が閉塞して心筋が壊死してしまいます。胸痛、動悸、息切れなどの症状がある場合はすぐに診察をお受けください。狭心症、心筋梗塞を診断されたら、すぐに治療を受ける必要があります。
不整脈
心臓は血液を全身に送るポンプ機能を担っており、心臓の洞結節で出された命令(電気活動)を心臓全体に伝え、24時間絶え間なく働いています。何らかの原因でこの命令がうまくいかなくなった状態を不整脈と言い、脈が早くなる、脈が遅くなる、脈が飛ぶなどの症状を感じるようになります。不整脈は自覚症状がでない方も多数おられます。定期的な心電図検査をお勧めします。当院では動悸症状がある、健診で不整脈をされた場合は心電図、24時間心電図、心臓超音波、採血検査から総合的に治療の必要性を判断します。
心臓弁膜症
心臓は血液を全身に送り出すために拡張と収縮の動きを絶え間なく行っています。また、心臓には右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分かれ、それぞれの部屋は弁によって仕切られ、血液の逆流を防いでいます。4つの弁にもそれぞれ名前があり、僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁と言います。心臓弁膜症は、疾患や加齢によって弁の機能が低下した状態をまとめて呼んだものです。心臓弁膜症は2種類に大別され、弁の閉じ方が不完全になり血液が逆流する逆流症(閉鎖不全症)と、弁が開きにくくなって血液の流れが阻害される狭窄症があります。心臓弁膜症は初期には自覚症状が乏しく、悪化すると労作時の息切れなどの心不全症状が出現します。胸痛や失神、動悸などの症状もでることがあります。症状出現時には、はやめの診察をお勧めします。
心不全
心不全は心臓機能が低下して、ポンプ機能がうまく働かなくり全身に十分に血液を送り出せない状態です。国内では平均寿命が延び高齢者が増加していますが、それに伴って心臓病の罹患者も増加傾向にあります。心臓病を含め様々な原因により心不全へと繋がる危険性があり、心不全が慢性化してしまうと、最悪の場合は命を落としてしまうこともあるため、早期治療が非常に大切です。
心不全の治療は長期間に渡るので、しっかり病状を理解することが大切です。
閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症は動脈硬化により血管が狭窄したり、閉塞したりする疾患です。全身の動脈に起こり得ますが、中でも四肢を含む手足の動脈に起こりやすく(特に足の動脈)、その病態を閉塞性動脈硬化症と呼びます。
近年は日本でもライフスタイルや食生活が欧米化しており、動脈硬化の因子である高血圧、高脂血症、糖尿病、加齢、喫煙、肥満、透析などが要因となって、閉塞性動脈硬化症の発症数も増加傾向にあります。
閉塞性動脈硬化症では、血管の狭窄や閉塞による血流悪化に伴い、様々な症状が生じます。Ⅰ〜Ⅳ期の病期に分類され、それぞれに異なる症状が現れます。
Ⅰ期 | 手足の冷感、痺れ |
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Ⅱ期 | 間欠性跛行(はこう):しばらく歩くと太ももやふくらはぎが痛み、休憩すると歩けるようになる |
Ⅲ期 | 安静時疼痛:歩かずに安静にしていても足が痛む |
Ⅳ期 | 潰瘍、壊疽:足への血流が妨げられることで、足に潰瘍が生じ、悪化すると足の壊疽が起きる |
糖尿病などを合併している方は、無症状でも動脈硬化による狭窄が進んでいくため注意しましょう。
Ⅳ期まで進み細菌感染を合併すると、血流が滞っているため足が腐ってしまい、最悪の場合は下肢切断に至ることもあります。
大動脈疾患
大動脈疾患には様々な種類がありますが、主なものとして大動脈瘤と大動脈解離があげられます。大動脈瘤には胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤がありどちらも動脈硬化が主な原因で、特に高血圧が重要なリスクファクターです。弱くなっている大動脈壁の血管が拡張し、悪化すると瘤ができます。治療はまず血圧コントロールが重要で、瘤が大きくなって胸部で5cm、腹部で4~5cm以上になると破裂する可能性がありステントグラフト内挿術や手術により行われます。
急性大動脈解離では急激な背部痛や胸痛、腹痛が起こり、その他にも麻痺などの脳血管障害症状や失神などが起こるケースもみられます。大動脈の内側に亀裂が入ることで元からある大動脈腔(真腔)とは別の偽腔と呼ばれる空間が生じます。9割以上の患者様が高血圧を基礎疾患として持っており、偽腔の状態(血流の有無)や位置、各臓器に繋がる血管に与える影響などにより重症度や、治療方法が薬物療法か手術かが決まってきます。病態によって死亡率は変わってきますが、命に危険を及ぼす可能性があり、専門病院での治療が必要となります。
静脈血栓塞栓症
深部静脈血栓症と深刻な合併症である肺血栓塞栓症をまとめて静脈血栓塞栓症と言います。深部静脈血栓症では下肢の静脈に血の塊である血栓が生じ、下肢に疼くような痛みや腫脹、色の変化が起こります。肺血栓塞栓症は、深部静脈血栓症によって下肢に生じた血栓が剥がれて血流にのり、肺の動脈を閉塞することで発症します。主な症状は動悸、胸痛、呼吸困難、失神で、悪化すると命を脅かす危険性があります。
治療は主に薬物療法が行われ、場合によって血栓を溶かす血栓溶解療法やカテーテル治療が実施されます。また、治療が終わっても定期的に経過観察・治療などが必要です。
心筋症
心筋症は、心臓の筋肉に異常が生じる疾患で、心機能が低下することで、心不全や不整脈などの症状が現れます。心筋症は拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症が挙げられます。原因も様々で、狭心症や心筋梗塞からくる虚血性心筋症や薬剤、糖尿病、アルコール、ウイルスなどに伴って生じるものや遺伝性のもの、原因不明のものまであります。
当院では問診にて病歴などをお伺いし、その上で胸部レントゲンや心電図、血液検査、心エコー検査などを実施します。さらに精査が必要な場合は、連携する医療機関をご紹介いたします。
心筋炎
心筋炎は心臓の筋肉(心筋)に炎症が起こる疾患で、様々な症状が現れます。心臓のポンプ機能が低下して心不全や不整脈がみられる場合もあり、劇症型心筋炎では命に関わることもあります。
原因は、ウイルス・細菌・寄生虫の感染、毒素、サルコイドーシスなどの全身性疾患、薬の副作用など幅広く、ウイルス感染によるものが最も多いです。
主に感冒や胃腸炎などのウイルス性疾患による感染症によって発症することが多く、症状として心不全症状としての息切れ、不整脈症状としての動悸、失神などがあり、胸痛も症状としてでることがあります。検査には、胸部レントゲン、心電図、心臓超音波検査、血液検査などがあります。心筋生検をおこなうこともあります。いずれにしても専門病院での精査治療が必要です。