呼吸器内科とは
肺や気管支の疾患を専門的に診察・治療するのが呼吸器内科です。
人間は誰しもが生まれてから絶えず呼吸を繰り返しており、1日に約3万回呼吸をしています。呼吸は無意識に行われていますが、呼吸機能に異常が起こると日常の生活の質(QOL)は著しく低下してしまいます。そういった状態を元に戻すために呼吸器内科では専門的な視点から検査・治療を行います。
呼吸器内科への受診
声帯の奥にある気管から気管支、肺などを画像評価や聴診などにより診断します。
そのため、呼吸苦を誘発する肺気腫や喘息、痰を誘発する肺炎を検査したいなどの要望は呼吸器内科が対応することとなります。
よくある呼吸器の症状
- 長期間咳が続く
- 息がしづらくなる
- 胸痛・背部痛
- 息がゼーゼーする(喘鳴)
- 痰がでる、痰が絡む
- 痰に血が混じる
- 嗄声(声がれ)
上記は生活の質(QOL)を低下させる要因となります。
また、重篤な疾患の初期症状として起こっている可能性もあり、早期発見・早期治療が求められるケースもあります。
そのため、上記の症状があれば早めに受診するようにしましょう。
咳がとまらない
咳が続く期間によって、「急性咳嗽(がいそう)」と「慢性咳嗽(がいそう)」の2種類に大別されます。
- 急性咳嗽:3週間以内で治まる咳
- 慢性咳嗽:8週間以上続く咳
3~8週間以内に治まる咳は「遷延性咳嗽」と言うこともありますが、基本的には慢性咳嗽に該当します。
急性咳嗽の原因
急性咳嗽の原因には、急性気管支炎や気管支喘息、感冒、肺炎、肺結核、肺がんなどが挙げられます。症状が自然に治まっていく感冒のようなものから、治療せずにいると命を落とす危険性のある疾患まで様々です。
咳の他に強い息苦しさを感じたり、肩で息をするような動作がみられたりすると、病状が悪化していることもあるので、早急に受診しましょう。
慢性咳嗽の原因
慢性咳嗽の主な原因は以下の①~③によるもので、特に①が最も多いです。
- 咳喘息やアトピー性咳嗽などのアレルギー性の咳
- アレルギー鼻炎や副鼻腔炎による鼻水の垂れ込み(後鼻漏)が原因の咳
- 逆流性食道炎が原因の咳
上記以外にも、結核、COPD(慢性気管支炎・肺気腫)、肺がん、ストレスなどの心因性の咳、血圧に関する薬の副作用などもあります。
診断
咳が長引いている場合は胸部レントゲン検査がお勧めです。重篤な疾患が原因ではないかと心配している患者様も多くいらっしゃり、肺炎や結核、肺がんなどの命に関わる疾患が原因ではないかを判断することが大切です。
また、疾患の判断には問診も大切です。問診では、咳が続く時期や症状が現れる時間帯、喘息の既往がないか、鼻水の量や胸やけがないかなどをお伺いします。
当院では、咳の原因である咳喘息・気管支喘息・COPDの診断に肺機能検査を行います。検査時の患者様の身体への負担は少なく済む検査です。
胸部レントゲン検査にて異常が発見された場合は、連携機関(当院2Fこう脳神経クリニック)にて胸部CT検査を行います。
また、逆流性食道炎を発症している可能性があれば、消化器病専門医が胃カメラ検査を実施します。
治療
咳喘息、アレルギー性咳嗽、逆流性食道炎は早期発見し、しっかり治療を行うことですぐに症状が改善されます。咳は生活に大きく支障をきたすものなので、咳が長期間続く場合はそのままにせず、ご相談ください。
痰が絡む・痰がでる
痰が以前よりも増えた、痰がいつもより多いと不安になってご来院される患者様は数多くいらっしゃいます。
痰が増える主な原因には、気管支喘息や感染症、慢性気管支炎・肺気腫(COPD)などが挙げられますが、重篤な疾患の症状として起こっていることもあります。痰に血が混じる血痰の量が増える場合は重篤な状態になることもあるので、正確な対応が不可欠です。
原因
タバコを吸われる方は、気道に慢性的な炎症が生じることがあり、痰がいつも絡むようになります。風邪の後に起こる感冒後咳嗽の患者様でも咳と痰の症状はみられますが、症状は約1~2週間で症状が治まっていきます。また、慢性気管支炎・肺気腫(COPD)や喘息によって気道が炎症することで痰が出ることもあります。
他にも、肺結核や肺炎、肺がんなどの重篤な疾患によって痰が出ている可能性もあります。
診断・治療
ほとんどの場合、風邪の後の咳に伴って痰がよく絡むようになります。多くは対症療法のみで対応しますが、状態によっては胸部レントゲン検査や喀痰検査、胸部CT検査などによって深刻な疾患の症状として起きていないかを確認することもあります。CT検査が必要な場合は連携機関(当院2Fこう脳神経クリニック)で施行し精査していきます。痰以外にも、息苦しさ、胸痛、血痰、発熱などの症状がみられる場合は、重篤な疾患が隠れていることもあるので、早めに受診することをお勧めします。
血痰が出る
痰に血が混じる血痰がみられたことで受診される患者様もいらっしゃいます。血痰は2種類に分けられ、痰に少しの血が混じるだけのケースと痰を出した際に気管から血の塊が一緒に出る喀血と呼ばれる緊急度の高いケースがあります。
吐血とは食道疾患や胃十二指腸潰瘍、胃がんなどが原因の胃の出血で、一方、喀血は気管、気管支、肺からの出血で、10mlほどの少量の出血でも気管を詰まらせてしまうことで窒息に繋がることもあります。そのため、いきなり喀血がみられた場合は早急に救急医療機関に連絡しましょう。
原因
風邪を発症した時に咳によって口の中の毛細血管が損傷し、痰の中に少量の血が混じることはよくあります。そのような血痰は問題ありませんが、重篤な疾患が隠れていることもあります。
肺結核は、以前は治療法がなく悪化して喀血死してしまうことがありました。現代でも結核を患っている患者様はいらっしゃり、血痰が出たら結核の可能性も考えます。
他にも肺がんやと気管支拡張症、肺非結核性抗酸菌症、肺真菌症(アスペルギルス)、肺炎、肺塞栓症、心不全などで起こることがあり、正しい診断が求められます。
診断・治療
重大な疾患を発見するために、最初に胸部レントゲン検査を実施します。異常が発見された場合は、追加検査としてCT検査と喀痰検査を実施します。ほとんどの場合、CT検査で判断可能ですが、判断が難しく出血が続いているケースでは、内視鏡による気管支の検査が必要になることもあります。当院ではCT検査を当院2Fこう脳神経クリニックで実施しますが、気管支内視鏡検査を行っていないため、必要な場合は連携する医療機関へご紹介します。
息苦しい
息苦しさを感じる原因は、貧血、心因性のもの、体力的なもの、肺疾患によるもの、心臓疾患によるものなど様々です。
近年はコロナウイルス感染症拡大により、血中酸素飽和度の測定がメディアで話題になりましたが、この値が低くなっている場合は何らかの重篤な疾患が原因の可能性があります。
原因
息苦しさの原因は多岐に渡りますが、肺疾患によるものであれば、気管支喘息、気胸、肺気腫(COPD)、肺炎、間質性肺炎などが挙げられます。また、心臓疾患によるものであれば、心臓弁に関する疾患、不整脈、心不全などが挙げられます。
他にも、過換気やストレスなどの心因性のもの、貧血、更年期障害、体力低下に伴って生じることもあります。
診断
診断では、まずは気管支喘息発作や自然気胸、肺炎、心不全、肺血栓塞栓症などの緊急度が高い疾患ではないかを確認し、次いでよく起こる疾患ではないか調べていきます。
問診を行い、同時に血中酸素飽和度を測定し、他にも胸の聴診や胸部レントゲン検査や心電図検査を実施します。CT検査が必要な場合は連携する医療機関(当院2Fこう脳神経クリニック)で施行し精査していきます。また、貧血の発症有無を調べる血液検査も即日実施できます。些細なことでも気になることがあれば、そのままにせずお気軽にご相談ください。
胸が痛い、背中が痛い
胸痛や背部痛が起こると、深刻な疾患を患っているのではないかと不安になる患者様は多くいらっしゃいます。
原因
他症状と同じく重篤な疾患の症状として起こっているかを鑑別することが大切です。
胸には特に大切な臓器が存在しており、狭心症や気胸、太い血管が破ける大動脈解離、肺炎、肺周辺の膜にまで炎症が及ぶ胸膜炎、心筋梗塞など重篤な疾患によって痛みが起きていることもあります。
命を落とす危険性がない原因としては、最も多いのは筋肉や軟骨、骨の痛みによるもので、それ以外にも皮膚のウイルス感染症である帯状疱疹、肋間神経痛、ストレス性のもの、逆流性食道炎などが挙げられます。
診断・治療
疑われる疾患に応じて問診や聴診、胸部レントゲン検査、心電図検査、状況に応じて血液検査、胸部CT検査を実施します。CT検査が必要な場合は連携する医療機関(当院2Fこう脳神経クリニック)で実施します。
命を落とす危険性のある疾患かを鑑別することで患者様に安心感を与えられます。診断と病状に応じて治療していきます。重篤な疾患でないと分かった場合は、病状に合わせて痛み止めなどで対応します。
検査結果が判断しづらい場合は連携している高度医療機関へお繋ぎします。
よくある呼吸器の疾患
気管支喘息
気管支喘息は、気管支が炎症を起こし、空気の通り道が狭くなる状態です。軽微な刺激で気管支の内部の壁が腫れ、痰が分泌されたり、気管支周辺の筋肉が収縮し、咳や喘鳴を引き起こします。悪化や発作の引き金となる要因には、乾燥、微粒子のハウスダストやタバコの煙、風邪、ストレスなどが含まれます。日本ではアレルギーが原因とされることが多く、治療はアレルギー源の特定と吸引の最小化、抗アレルギー薬の内服によるアレルギー反応の抑制が中心です。続く咳や痰、息苦しさにお困りの方は、お気軽にご相談ください。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、環境汚染物質やタバコの煙などの有害物質によって気管支や肺が損傷を受け、空気の通り道が狭くなり、肺の排気機能が低下する疾患です。日本では、喫煙が主な原因とされ、しばしば「肺の生活習慣病」と呼ばれます。
初期段階では症状がほとんど現れず、肺の細い気管支が慢性的な炎症を起こし、気道が狭くなり、肺胞と呼ばれる気体と血液の交換を担う部分が機能不全に陥ります。これが肺気腫と呼ばれ、酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が効果的に行われず、低酸素血症の症状が現れます。
禁煙が治療の第一歩ですが、ステロイド薬や気管支拡張薬などの吸入治療が有効であり、呼吸器リハビリテーションなどの理学療法も併用されることがあります。
肺炎
肺炎は、細菌やウイルスによる感染性のものと、アレルギーや薬など非感染性のものに分類されます。
感染性の肺炎は、細菌、ウイルス、中間の微生物、真菌などが原因となります。感染性の肺炎は主に肺胞性肺炎に分類されますが、肺胞性肺炎と間質性肺炎に区別されます。肺胞性肺炎では、高熱とともに黄色い痰が出るのが特徴です。
肺炎は風邪に似た症状が現れますが、強い咳や痰などの症状が1週間以上続く場合は感染性の肺炎を疑う必要があります。通常、人体には異物と闘う免疫機能が備わっており、細菌やウイルスが肺まで進入することはありませんが、免疫機能が低下すると肺炎を発症する可能性が高まります。特に高齢者は免疫力が低下しやすいため、注意が必要です。
治療は原因に応じて異なります。細菌感染が確認された場合は、抗菌薬によって細菌を排除することができますが、ウイルス性の場合は抗菌薬は効果がありません。対症療法として、抗炎症薬、解熱鎮痛薬、去痰薬、鎮咳薬などが使われることもあります。
気管支炎
気管支炎は、細菌やウイルス感染によって引き起こされる急性気管支炎と、アレルギーや喫煙などによって起こる慢性気管支炎に分類されます。慢性気管支炎の代表的な疾患としてはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)があります。
急性気管支炎は主に細菌やウイルスによる感染が原因で発生し、特にウイルスによるものが多いです。抗ウイルス薬が有効でない場合、症状の緩和に向けて鎮痛解熱薬、消炎鎮痛薬、鎮咳薬、去痰薬などの対症療法が主に行われます。咳や痰、発熱などの症状を抑える治療が中心です。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が停止し、無呼吸状態に陥る疾患です。通常、睡眠中に10秒以上呼吸が止まる状態が1時間に平均して5回以上ある場合に診断され、20回以上の場合は中等症とされます。
無呼吸のために低酸素状態になり、身体が酸素不足を補おうとして睡眠から覚醒するため、睡眠不足の症状が現れます。無呼吸の程度が強いほど、日中の活動に支障をきたすことがあります。
生活習慣病などとの関連が多いですが、心因的な疾患がある場合も睡眠時無呼吸症候群の症状が出ることがあります。
重度のいびきや、パートナーや家族から無呼吸の指摘を受ける、日中に深刻な睡眠不足を感じる場合は、早めにご相談ください。