注意すべき胃痛症状
胃痛は、暴飲暴食による胃炎や胃がんなど、様々な疾患が原因で起こるもので、原因によって症状も変わります。そのため、医師に痛みを伝える際にずっと痛みが持続するのか、痛みがでたり、おさまったり断続するのか、キリキリするような刺痛、シクシクするような鈍痛、ギュッと圧迫されるような痛み、ズキズキした痛みなのか、具体的に伝えることが大切です。
また、胃痛はしばらく様子をみても大丈夫な胃痛、早めに受診する必要がある胃痛、すぐに受診が必要な胃痛の3つに大別されます。
しばらく様子をみても
問題ない胃痛
- すぐに治まって再発しない胃痛
- 暴飲暴食など原因が特定できる一過性の胃痛
早めに受診する
必要がある胃痛
- 慢性的な胃痛
- 一時的に治まっても、再発する胃痛
- 胃痛に伴って胸やけや胃もたれが起こる
- 胃痛に伴って下痢や発熱が起こる
すぐに受診が必要な胃痛
- 強い胃痛が急に起こる
- 胃痛に伴って吐血や嘔吐が起こる
- 歩くたびに胃痛が強くなっていく
- 痛む部分を押したり話したりすると痛みが増す
長期間続く胃痛や激しい胃痛、胃痛に伴って他の症状も起きている場合は早めにご相談ください。軽い胃痛でも胃がんのこともしばしばあります。胃痛は誰しもがよく起こる症状で、市販薬でも軽快できるので放っておかれることが多いですが、重篤な疾患の症状として起きていることもあります。上記のような症状がある場合は、お気軽にご相談ください。
胃痛が発生する原因
胃痛の原因は様々で、胃の知覚過敏や機能低下、アルコール摂取や食事が原因の胃酸の過剰分泌、ストレスなどによる自律神経の失調、ピロリ菌に感染したことによる胃粘膜の炎症や潰瘍、胃がんなどが挙げられます。
食生活
暴飲暴食や刺激物(唐辛子やカフェインなど)の過剰摂取によって胃に大きく負荷がかかってしまい、胃痛が生じることがあります。他にも、脂っこい食事などによって胃酸が過剰に分泌されて胃粘膜にダメージが与えられ、胃痛が生じるケースもあります。
ストレス
消化器機能は自律神経によって管理されており、ストレスが溜まると自律神経が失調し、胃機能が大幅に低下します。それにより、胃の蠕動運動の低下や胃酸の過剰分泌などが起こり、胃痛へと繋がってしまいます。
ピロリ菌
ピロリ菌は胃粘膜を保護する粘液に付着して棲みつきます。胃は強酸性の胃酸によって満たされており、他の細菌は死滅してしまいますが、ピロリ菌は周囲の尿素を分解してアンモニアを産生することで胃酸を中和し、胃の中で生き続けます。ピロリ菌が産生した毒素やアンモニアなどによって粘膜がダメージを受け、炎症が長期間続くことで、慢性的な胃痛が起こります。
胃痛を伴う消化器疾患
急性胃炎
食べ過ぎ、過度な飲酒、ウイルスや細菌感染、ストレスなどによって急激な胃痛が起こる疾患です。主な症状としては、胃痛以外にも胸やけや膨満感、吐き気・嘔吐などが挙げられます。
慢性胃炎
慢性的な胃の炎症が生じる疾患です。悪化すると胃粘膜の修復が追い付かなくなり、萎縮性胃炎を引き起こし、胃がんの発症の可能性が上がります。過食やストレス、アルコール摂取、ピロリ菌感染によって起こり、非ステロイド系消炎鎮痛薬などの副作用なども深く関わっています。胃痛だけでなく、膨満感や胃もたれ、胸やけ、吐き気などが起こります。
胃食道逆流症(GERD)、
逆流性食道炎
胃食道逆流症では、胃酸や食べ物などの胃の内容物が食道に逆流することで、胃痛や呑酸(酸っぱいものが口まで込み上げてくる症状)、咳、胸やけが生じます。また、食道粘膜に炎症が生じる逆流性食道炎と炎症が生じない非びらん性胃食道逆流症の2つに分けられます。
代表的な原因としては、老化による筋肉量の低下、寝る前の食事、胃酸分泌を促す食生活、悪い姿勢・お腹を締め付ける衣服・肥満などによる腹圧の上昇などが挙げられます。再発しやすいため、検査・治療を受けることが大切です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃酸は胃壁を溶かすほどの強酸性ものですが、健康な状態であれば粘液によって胃粘膜が保護されているので傷付くことはありません。しかし、胃酸が過剰分泌されて粘液を上回ってしまうと胃粘膜がただれて潰瘍ができてしまいます。代表的な原因としてはピロリ菌感染によるものですが、食事やアルコール摂取、ストレス、非ステロイド系消炎鎮痛薬など薬の副作用なども発症や増悪に深く関係しています。胃潰瘍・十二指腸潰瘍のいずれも胃痛、みぞおちの痛み、膨満感や胃もたれ、吐き気などが起こりますが、症状が起こるタイミングは異なります。胃潰瘍は食後に、十二指腸潰瘍は空腹時に起こりやすいです。
胃がん
胃がんは欧米に比べて日本での発症数が多く、多くは萎縮性胃炎から発症に繋がると言われています。発症要因の大部分はピロリ菌感染によるものですが、塩分の取り過ぎ、喫煙、栄養バランスが偏った食事なども考えられます。
早期の胃がんや特殊なタイプの胃がんの発見には胃カメラ検査が不可欠です。近年は内視鏡の診断・治療レベルが上がってきており、がんの早期発見・早期治療が以前に比べて容易になっているので、定期的に胃カメラ検査を受けるようにしましょう。
胆石症
胆石症は、胆のう内で胆汁の成分が凝固して結石が形成される病気です。無症候性胆石は自覚症状がなく、治療の必要はありません。
しかし、食事後や深夜に胆のうの収縮により結石が出口に引っかかると激しい右上腹部痛が起こります。結石の大きさや数によって痛みの発作が異なり、細菌感染を起こすと発熱も伴います。
胆石症・胆のう炎
胆石症は、胆のう内で胆汁の成分が凝固して結石が形成される病気です。無症候性胆石は自覚症状がなく、治療の必要はありません。急性胆のう炎は、胆のうの炎症を引き起こす疾患で、右腹部の痛み、圧痛、発熱などの症状が現れます。
主な原因は胆石症(胆のう結石)で、結石が胆のうの出口を閉塞することで胆汁が滞留し、胆のう内に細菌感染を引き起こし胆嚢炎を生じます。
急性膵炎・慢性膵炎
膵臓は、炭水化物を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂質を分解するリパーゼなどの消化酵素を生成します。これらの消化酵素は、通常は不活性型として膵臓内で生成され、自らの膵臓を消化しないようになっています。急性膵炎の原因は主にアルコールと胆石で、主な症状は腹痛、背部痛、発熱です。 大量の飲酒などの要因により、膵臓の消化酵素が膵臓内で活性化し、自己消化作用を起こすことがあります。この現象を膵臓の自己融解と呼びます。急性膵炎は、消化酵素が急速に活性化し、膵臓を溶かしてしまう疾患です。 一方、慢性膵炎は、膵臓に繰り返し炎症を起こす疾患で、原因はアルコールと喫煙が関係しています。消化酵素が徐々に活性化し、膵臓に炎症を引き起こします。炎症が繰り返されると、正常な膵組織が間質といわれる線維組織に置き換わり、膵臓全体が硬くなり、膵石をつくることもあります。初期症状は主に腹痛ですが、進行すると次第に膵機能が低下し、糖尿病や下痢(脂肪便)、黄疸などの症状がでることがあります。
膵臓がん
膵臓がんは特有の症状がないため、なかなか早期発見はできません。初期症状としては、腹部の違和感や食欲低下、体重減少など他の疾患でもみられる症状が多く、進行すると胃の不快感や腹痛、腰背部痛、黄疸などの症状が現れます。
現在のところ、明確な原因は分かっていませんが、喫煙、糖尿病、慢性膵炎、膵臓がんの家族歴などが関係していると考えられています。これらに当てはまる方は定期的に検査を受けて早期発見に努めましょう。
その胃痛は機能性
ディスペプシアの可能性も
機能性ディスペプシアは普段あまり聞くことはないかと思われますが、検査で消化器粘膜に病変がみられないにも関わらず、慢性的な上部消化管症状(胸やけや胃痛など)が生じる疾患です。以前は神経性胃炎などと診断されて胃炎治療が実施されていましたが、炎症が起きているわけではないので治療効果が得られず、つらい症状に苦しむ患者様が多くいらっしゃいました。
しかし、近年では機能性ディスペプシアは胃の知覚過敏や機能低下によって起こるものと分かり、しっかり治療することで治癒が期待できるようになりました。代表的な症状には、胃痛や胸やけ、胃もたれ、吐き気、お腹の張り、早期膨満感などが挙げられます。食べる量が減ったと感じるようであれば、お気軽にご相談ください。
治療方法
生活習慣の改善
まずは食事のタイミングや食事内容などの見直しが必要です。また、睡眠時間などの見直しも並行して行います。患者様と確認しながら、継続できるように適度な範囲で行っていきます。
内服薬
胃酸分泌抑制剤や胃粘膜保護剤、蠕動運動などの機能を向上させる薬などを患者様の病状やお悩みに応じて選択していきます。
漢方薬
消化器の働きを改善させるもの、粘膜の知覚過敏を軽快させるもの、自律神経のバランスを整えるものなどを、患者様の病状や体質に応じて選択します。漢方薬の中には1種類で様々な効果を得られるものもあります。
胃痛の際の検査方法
検査では、炎症などの異常がないかを観察することが大切です。原因疾患を特定し、病変部の状態をしっかり把握することが正しい治療へと繋がります。
当院では、胃痛を訴える患者様には症状をお聞きした後、正しい治療を行うために以下の精密検査を実施します。
胃カメラ検査
胃カメラ検査では、内視鏡スコープを入れて上部消化管全域(食道・胃・十二指腸)の粘膜を隈なく確認します。疑わしい病変があれば切除して病理検査に回し、確定診断まで行えます。当院は熟練の医師が検査を実施しているので、潰瘍や炎症、ポリープ、小さな早期がんも見つけられます。切除した組織を調べることでピロリ菌に感染しているかも確認可能で、陽性反応が出た場合は除菌治療も行えます。
腹部超音波検査
超音波検査は、胃・大腸カメラ検査などで確認できない膵臓、肝臓、胆のうなどを画面に映し出してリアルタイムで観察できる検査で、苦痛が少なく安全な検査です。原則、検査は予約制となっていますが、緊急性が高い場合や食事を抜いたり条件が揃っていればいつでも受けられます。
血液検査
血液検査では炎症の有無や肝胆膵酵素の数値を調べられ、他にも消化管出血の可能性がある場合は貧血の有無も確認可能です。
腹部レントゲン検査
X線を照射して腹部の内側を撮影します。主に大腸や小腸が異常に拡大していないかを調べられ、腸閉塞の有無を確認できます。
腹部CT検査・腹部MRI検査
連携機関(当院2Fこう脳神経クリニック)にて状況に応じて即日、腹部CT検査・腹部MRI検査が可能です。
翌日・翌々日にはCT・MRIの専門医による読影結果を当院で説明いたします。
胃痛を放置する危険性
胃痛は暴飲暴食によって起こるよくある症状ですが、胃潰瘍や進行性胃がんでも軽度の胃痛の場合もあります。何度も繰り返したり、胃痛が長引いたりする場合は慢性胃炎によって起こっている可能性があり、悪化して胃粘膜が萎縮する萎縮性胃炎に発展すると、胃がんを引き起こすリスクが高まります。
また、胃がんによって生じる胃痛でも市販薬によって一時的に症状が軽快することもありますが、胃がんはその間も悪化しています。胃痛が慢性化している場合はそのままにせず、原因を特定するためにも早急にご相談ください。